五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)

□23-難癖とJK
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 指輪が砕けると、明るくなった世界が広がる。
 相変わらずなマホー陣が床に描かれてて、マホー陣の周りには大人たちがいた。

「使者が来た! 御前に連絡しろ!!」

 前にも聞いたことあるような台詞が耳に届いて、顔をあげる。
カーテンの方を見てみたけど、隙間は真っ暗の夜だった。何時かは分からない。
 
「また君か」
 
 ムカつく声に意識を向ければ、にんまりと笑うクソジジイが立ってた。
 2回もアミを過去送りにした現代のクソジジイを思い出してイライラが湧き上がる。
 トゲトゲする気持ちを飲み込んで、アミは低く質問する。

「ねえ、今っていつ?」
「ハハハっ、ずいぶんと大雑把な質問だな」

 不機嫌なアミを笑い飛ばすと、クソジジイは懐から懐中時計をとりだした。

「2003年4月10日20時13分だよ」
「あっそ。じゃあ、これあげるね」

アミはクソジジイに指示書を投げつけてやった。
バサッていう効果音と一緒に指示書が宙を舞う。

クソジジイに当たる直前、傍にいた施設の大人が間に入って指示書を受け止めた。

「おい、お前!! 御前に対して何てことをッ!!」
「うっさい。何か文句あんの?」
「このガキ…」

 半分キレ気味に睨み付ければ、施設の大人は口を半開きにしてプルプルしてた。

「まあいいさ。彼女は知らない使者でもない。むしろ初めての“二度目まして”だ」

 クソジジイは指示書を受け取りながら、意味ありげにそう言った。
 アミはジジイの事を無視して、自分の要求をストレートに伝える。

「ねえ、アミ疲れてるからお風呂入って寝たいんだけど。準備してよ」

 考えてみたら、過去に行く前に1日普通に活動して、1999年に飛んでからも丸1日行動して、夜も野宿でぜんぜん寝られなかった。
 つまりアミは、まるまる2日間、起きっぱなしでお風呂やシャワーも浴びてない事になる。

 さすがに眠いのと、汚いのとで、精神的にストレスがヤバすぎて、ヤバい。

「ああ、いいだろう」

 ジジイは指示書を読んでる間は、アミはいらないって思ったみたいで、
 アミの希望を叶えるように施設の大人に指示をだした。



 制服を脱衣所に脱ぎ捨ててお風呂に入る。
 制服を洗っておいてってお願いして脱衣所からお風呂場に入る。

 大人が間違って持ってかないように、ウサタンポシェットも一緒。
 濡れないように置く場所に工夫してたる時に、やっぱり過去も未来もアミのやる事ってあんまり変わんないなって思った。

 2日分の汚れをおとしたら凄いさっぱりした。やっぱりお風呂って大切!

 お風呂から出たら脱衣所に、ネグリジェみたいなワンピースが置いてあった。
 それを着て廊下に出る。廊下で待ってた大人に次に案内されたのは寝室だった。

 ベッドと、机と椅子。ベッドサイドに時計と水差しが置いてあるだけのシンプルスタイル。
 もっと可愛い部屋が良かったけど、寝るだけなら別にいっかとアミは前向きに考える。

「アミ、これから爆睡するから。途中で起こしたらマジキレるからヨロシクね。って他の人にも言っといて」

アミはアミを案内してくれた人に、じゃあね、って言って、部屋の中に入る。

 ウサタンポシェットを抱きながらベッドに倒れこんだら、すぐに寝落ちした。



 何度か目を覚まして置時計を確認して、深夜の3時になったら一回起きた。
 ウサタンポシェットからピルケースを出して、中の薬をパキパキ取り出す。

 2度目の時間旅行でも当然アミの体内時間は流れてるから、日課のお薬タイムは忘れらちゃだめ。てか忘れたらアミ死活問題。

 薬を飲み終わったら少し安心して、また夢もない眠りの世界へ旅に出かけた。



 アミが起こされたのは次の日の10時くらいだった。
 まだ寝てたかったけど、クソジジイが呼んでるから早く来いって無理やり支度させられた。

 洗濯してもらったアミのなんちゃって制服に着替えてクソジジイの執務室に向かう。



 応接机を挟んでアミの対面に座ってるジジイは無表情だった。

「君、ゴジョウサトルと繋がってるだろ?」

 いきなりそんな意味不明な因縁をつけられて、アミは眉間に皺をよせる。

「ハッ? なに言ってんの?」

 聞いてみたら、アミが過去に来て以降“商品”が売れなくなったんだって。なんでかっていうと、ごじょーさとるが邪魔してるせい。だから、アミがごじょーさとるに何か言ったんじゃないか。どーなんだ。ってジジイは疑ってた。

 見当外れも良いところすぎて、アミは呆れる。

「なにそれ、アミ、知らないし」
「とぼけるつもりか?」
「だって、アミ、ごじょーさとると会った事ないもん」

 前の時間旅行では、アミは結局ごじょーさとるに会えなかった。
 現代の時だってアミはごじょーさとるに会ったこともない。

「僕に嘘をつくつもりか? ゴジョウサトルと仲良さそうにこんなものまで撮っておいて」

 ジジイはそう言って、応接机の上にプリクラを置いた。
 よく見たらプチごじょーさとるとアミのプリクラだった。

 こっちに持ってきた荷物はジジイたちに預けてたわけだけど、それにしたって人の財布を勝手に見て、勝手にプリクラを取り出すとか気持ち悪いよね。
 うわー、プライバシーの侵害じゃん。マジ無いわー。ってメッチャ引いたけど、話を進めるためにアミは大人な対応をする。

「今、そのプリクラ関係なくない?」
「まだシラを切るつもりかい?」
「たしかにその子も“ごじょーさとる”だけど、バケモノじゃないから関係ないでしょ」

 ジジイと敵対してるのは、気持ち悪い“バケモノ”のごじょーさとのはず。
 人間のプチごじょーさとるを持ち出されてもアミ困っちゃう。

「君は何を言ってるんだい?」

 心底意味不明って顔をされたから、アンタが頭おかしいじゃん?って目つきでアミは睨み返した。

「そっちこそ何言ってんの? ジジイの敵って“バケモノ”のごじょーさとるでしょ?」
「君の言ってる事は全く理解できないが、私の邪魔をしているのは、“この”ゴジョウサトルだ。――おい、資料を」

 ジジイが後ろにいた施設の大人に声をかけると、すぐに紙の束が出てきた。

 紙の束の上にはクリップで写真が挟んであって、
 そこには、浴衣だか着物だかを着たプチごじょーさとるが不機嫌な顔で写ってた。

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